長生きしたい――このようにいうとき、ただ単に長生きできればよいのでしょうか。
いえいえ、決してそういう意味ではないでしょう。
「長生きしたい」が意味するのは「健康に長生きしたい」ということ。
そのためにはどうしたらよいのか、「健康寿命」をのばす方法をご紹介します。
目次
1.平均寿命と健康寿命
日本人の平均寿命は、平成28年では男性80.98歳、女性87.14歳までのびました。
ところが、この平均寿命のうち、男性では約9年、女性では約12年が、「健康ではない期間」とされています。
この健康ではない期間を平均寿命から差し引いた「健康寿命」をいかに長くしていくか、この取組みが注目されています。
2.健康寿命をのばす3つのアクション
健康寿命をのばすために、厚生労働省が推進しているのが「スマート・ライフ・プロジェクト」です。
具体的には、
- 運動
- 食生活
- 禁煙
の3分野を推進しようとする方策です。
2.1 運動:スマート・ウォーク―毎日プラス10分の運動
厚生労働省が定めた「健康日本21」では、
- 日常生活における歩数の増加(1200~1500歩の増加)
- 運動習慣者(1年以上にわたって1回30分以上の運動を週2回以上行っている者の増加)の割合の増加(約10%増加)
などが目標とされています。
1200~1500歩の増加に相当するのが、10~15分間歩くこと。
「毎日プラス10分の運動」として、苦しくならない程度のはや歩きをプラスするだけで、不足している運動を補えることになります。(「あなたは毎日からだを動かしていますか?」参照)
このような「毎日プラス10分の運動」が、健康寿命をのばすのに役立つとして、すすめられています。
2.2 食生活:スマート・イート―毎日プラス一皿の野菜
「健康日本21」では、1日350 gの野菜が必要とされています。
2015年「国民健康・栄養調査」によると、日本人の実際の野菜の摂取量は1日293 g。
あと60 gぐらい不足しているのが現状ですね。
野菜に期待する栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維などですが、野菜でとるのが無理なら、ビタミンやミネラルのサプリメントを飲む、青汁や野菜ジュースなどから食物繊維をとるといったことも1つの方法です。
でも基本に忠実に野菜でとるなら――「毎日プラス一皿の野菜」です。
1日のうちメインにしているのが夕食なら、朝食や昼食では野菜が不足しがち。
昼食がたっぷりで朝食と夕食は軽めなら、朝食や夕食で野菜が不足していることでしょう。
そのような野菜が不足している食事に、たとえば、プラス一皿の野菜として「トマト半分」を足してみたら、それだけで野菜がプラス75 gになります。
もちろんほかの野菜でもいいので、野菜スープを作りおきして、朝食に野菜スープを足してみてもいいですね。
また、ミニトマトなら1個20 g程度なので、洗ってテーブルの上にのせておき、おやつがわりに1日3つ食べてみるだけでも野菜がプラス60 gになります。
このような「毎日プラス一皿の野菜」が、健康寿命をのばすのに役立つとされています。
2.3 禁煙:スマート・ブレス―たばこの煙をなくす
たばこを吸うと、健康に害があるだけでなく、肌の美しさや若々しさにも影響が出てきます。
これらはよく知られるようになりましたので、健康のことを考えて、たばこを吸わない人は増えてきているのではないでしょうか。
ところが、自分さえ吸わなければよいというわけではありません。
なぜなら、ほかの人がたばこを吸ったときの副流煙(ふくりゅうえん)を吸ってしまう「受動喫煙(二次喫煙)」が心配だから。
もし喫煙エリアと禁煙エリアにわかれているレストランに入ったとしたら――その場合は迷わず禁煙エリアを選びましょう。
副流煙の中には、自分で吸ったときの主流煙(しゅりゅうえん)より多く、健康に害のある物質(※)が含まれています。
※ニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍
さらに忘れてはいけないのが「残留受動喫煙(三次喫煙)」です。
三次喫煙は、たばこを吸った人がいた部屋のにおいなどが目安になるのですが、いったん部屋にたばこの成分がしみついてしまったなら、たばこを吸わなくてもそこにいるだけで三次喫煙となり、健康に悪い影響を引き起こすことがわかっているのです。
ですから、ホテルの部屋なら禁煙ルームを選ぶ、お店に入るならたばこのにおいがしないお店を探すようにする工夫も必要ですね。
このような「たばこの煙をなくす」取組みが、健康寿命をのばすとされています。
3.けんしん(健診・検診)で健康チェック
スマート・ライフ・プロジェクトの3つの分野――運動、食生活、禁煙に気をつけた生活をはじめたら、効果があがっているか定期的に「けんしん(健診、検診)」を受けてみましょう。
「けんしん」には2つの漢字があてられています。
1つは「健診」、健康診断のことで、「健康かどうか・病気のリスクがあるかどうか」を調べることをあらわしています。
もう1つの「検診」は、「ある特定の病気にかかっているかどうか」を調べて早期に治療することをあらわしています。
いずれの「けんしん」も、健康寿命をのばすために定期的に受けて、生活の見直しや早期治療に活用していきたいものです。
4.健康寿命をのばすためのおすすめ情報
「健康寿命」をのばすために、いろいろな取組みをしたとしましょう。
でも自分や家族だけで考えていたのでは、解決しない疑問が出てくることがあるかもしれません。
そのようなときにおすすめしたいのが「健康サポート薬局」と「健康相談イベント」です。
4.1 「健康サポート薬局」を活用しよう
健康に関する施設には、病院、診療所、薬局など、さまざまなものがあります。
病院や診療所は「病気かな?」と思ったときにかかることが多いのではないでしょうか。
病院や診療所が病気になってからかかるのに対して、薬局は病気になる前から健康を維持するために、また、ちょっとした病気なら薬剤師に相談しながら医薬品を選びセルフメディケーションをするのを助けてくれる施設です。
現在、多く目にする「調剤薬局」は、処方箋を持っていくところというイメージかもしれません。
ところが、処方箋で薬を用意してくれて、処方箋がないときでも健康相談にのってくれる「健康サポート薬局」という薬局があるのをご存知でしょうか。
「健康サポート薬局」は厚生労働省が推進している薬局です。
1年365日、健康の維持・増進を担ってくれる薬局として、2025年までに、全国で1万~1万5000箇所つくる予定と厚生労働省は発表しています。
平成30年現在では、厚生労働大臣が定める基準をクリアした「健康サポート薬局」は全国で1000箇所程度ですが、もし自分の住んでいる地域に「健康サポート薬局」があるなら、これを活用しない手はありません。
どこに「健康サポート薬局」があるのかは、各都道府県の「薬局機能情報検索システム」を見てみましょう。
たとえば東京都の場合は「t-薬局いんふぉ」というウェブサイトにあり、健康サポート薬局を調べることができます。
また「健康サポート薬局のロゴマーク」を掲げている薬局もありますので、自宅の近所で見かけたら覚えておきましょう。
4.2 「健康相談イベント」を活用しよう
厚生労働省が推進しているスマート・ライフ・プロジェクトは、「健康寿命をのばそう!」というウェブサイトをもっています。
この中に、薬局が行っている「健康相談イベント」の活動報告が掲載されています。
自宅の近所の薬局がのっていたら、次回の「健康相談イベント」の開催について、たずねてみてもよいでしょう。
最近は、薬局に管理栄養士という食事に関する相談相手がいることも増えています。
健康を保つための日々の食生活についても相談できますので、「かかりつけ薬局」として、1箇所、選んでおきましょう。
健康寿命をのばす方法として、運動、食生活、禁煙の3つの取組みを中心におく「スマート・ライフ・プロジェクト」をご紹介しました。
健康サポート薬局や健康相談イベントなど、健康に役立つリソースも参考にしていただき、「健康に長生きしたい」がかなうよう、日々の生活を少しだけ変えてみてはいかがでしょうか。