冬が近づくと体温を下げて冬眠してしまう動物たちがいます。
人も、寒くなってくると動くのもおっくうになってしまいがち。動かないと消費カロリーが減り、体重がしだいに増加してきます。
さらに知っておいてほしいのは、「からだの冷え」自体が肥満と関係があることです。からだの冷えを防ぐことができれば、肥満の解消にもつながるかもしれません。
目次
1.低体温は太りやすい
体温を毎日はかってはいなくても、自分のおおよその体温はご存知でしょう。
一般的に体温は「36~37℃」で調節されていて、健康なからだを維持するには「36.5℃」の体温が理想的といわれています。
わきの下ではかった場合には「36~37℃」ですが、からだの中心部ではさまざまな酵素が働きやすい「37℃ぐらい」に調節されています。
理想的な体温と自分の体温と比べると、低い場合が多いかもしれません。近年、理想的な体温ではなく、体温が35℃台という体温の低い人も増えてきているようです。
ところで、1日に必要なカロリーは、身長から求められる標準体重(kg)と、基礎代謝量の基準となる基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)、身体活動レベルから求めることができます。(詳しい計算方法は「1日に必要なカロリーと栄養素を知る」を参照してください。)
実は、この基礎代謝量が、体温により変化することが知られています。
「体温が1℃下がると基礎代謝量は12~13%下がる」のです。
このように、低体温は基礎代謝量が下がった状態ですので、太る原因の1つと考えられるわけです。
2.冷えを防ぐ必要性
「低体温」であれば必ず「冷え」を感じているというわけではありませんが、「冷え」から、さらに病的な「冷え症」になった/なりつつある人には「低体温」の人が少なくありません。
冷え症の人には、そのほかさまざまな症状があらわれます。寒がり、寒さに弱い、手足が冷える、顔色が悪い、下痢しやすい、尿の量や回数が多い、うすい鼻水が出る、不妊症など、多彩ですね。
これらの症状がおこらないよう冷えを防ぎ、冷え性にならないようにすることは、健康に生活していくことにつながるといってよいでしょう。
3.からだを冷やさないための注意
体温を上げるために有効なのは、運動により筋肉量を増やすことですが、このほかにも外側からの服装の注意や内側からの食べ物の注意があります。
3.1 からだを冷やさないための服装の注意
からだを冷やさないようにするには、服装についての問題があります。
冬の寒さが厳しい中国の女性は、冬になるとスカートではなくパンツで完全防備して街を歩きます。
このようなところから日本にやってきた人が驚くのは、日本では冬でもミニスカートで歩いている人が少なくないことといいます。
気候にあわせてからだを冷やさない服装を考えることも、健康を守るためには心がける必要がありそうです。
また夏でも、冷房完備の場所が増えていますが、職場など暑がりの人・寒がりの人が両方いるところでは、自分にあわせて室温を調整できることは必ずしも容易ではありません。
夏は冷えすぎ、冬は暖めすぎで、体調に影響が出てくることが考えられますので、服装で調整ができるよう、ひざかけや羽織る物などを準備して、まめに脱ぎ着する対策が必要です。
3.2 からだを冷やさないための食べ物の注意
食べ物については、からだを過剰に冷やす食べ物は避けることが必要です。
夏冬問わず、スーパーやコンビニに行けば、冷たい飲み物やアイスクリームを売っています。家の冷蔵庫にはいつでも何かしらの冷たい飲み物が常備されているでしょう。
けれども、美味しいからといって、これらを過剰にとることはからだを冷やすことにつながります。からだのことを思うなら、できれば夏でも、あたたかい飲み物を飲みたいものです。
自然の食べ物には、それ自体にあたためる性質や冷やす性質があるため、夏の暑い時期には、スイカやきゅうり、トマトなど、からだを冷やす食べ物をとることがすすめられます。
しかし冬になれば、からだを冷やす食べ物よりも、からだをあたためる食べ物、たとえば、ニラやにんにく、ショウガなど、をうまく取り入れていくほうが、からだを冷やさないためのコツといえるでしょう。
4.からだをあたためる食べ物
4.1 蒸しショウガ
からだをあたためる食べ物にはさまざまなものがあります。なかでも注目されているのが「ショウガ」です。
ショウガは、漢方薬でも「生姜(しょうきょう)」と「乾姜(かんきょう)」として使われています。蒸しショウガは乾姜に相当するもので、蒸して乾燥させたものをいいます。
生姜と乾姜では働きが異なります。
生のショウガである生姜には、ジンゲロールという成分が多く含まれていて、吐き気をおさえる働きがあります。
一方、乾姜は、蒸して乾燥することで、ジンゲロールが減り、ショウガオールという成分が増えます。
このショウガオールという成分が増えているので、からだの中心をあたためてポカポカさせる働きをもつようになります。
ですから、蒸しショウガのほうが、体温を上げる働きがありますので、肥満に効果があるといってよいでしょう。
蒸しショウガは乾姜を漢方薬局などで買ってきてもよいのですが、自分でもつくることができますので、ご紹介しましょう。
①収穫されたばかりの「新ショウガ」ではなく、貯蔵されていた「ひねショウガ」を用意します。
②よく洗い、皮のまま、縞模様に平行に1mmの厚さにスライスします。
③蒸し器で30分間蒸します。
④天日干しで1日、室内干しで1週間で完成します。
この作り方が基本ですが、オーブンあるいはオーブン機能つきの電子レンジがあれば、蒸し器で蒸して干すかわりに、オーブンを80℃にセットし1時間ぐらい乾燥し、乾燥の度合いをみながら10分ずつ乾燥するまで続けることでも、できあがります。
ただしオーブンではなく電子レンジで乾燥すると、発火する可能性があり危険ですので、必ずオーブン機能を使うようにします。
このようにして作った蒸しショウガは、常温(15~25℃)で3か月保存ができますので、細かく粉状にしておいて、紅茶に入れて飲んだり、スープや鍋物に加えたりなど、いろいろと使ってみては、いかがでしょうか。
4.2 あたためる性質をもつ食べ物
気温が下がる冬におすすめしたいあたためる性質をもつ食べ物をご紹介しましょう。
4.2.1 肉・魚類
羊肉、牛肉、鶏肉などがあたためる肉類です。
特に、地面に暮らす動物よりも、飛んでいる鳥のほうが太陽に近いところで暮らして太陽の「陽」(あたたかいもの)をたくさん取り入れているため、鳥の肉があたためる肉類としておすすめとされています。
日本で鳥の肉というと「鶏肉」です。
ニワトリは空を飛ぶわけではありませんが、鳥の仲間であたためる作用が強いので、積極的にお料理に使ってみましょう。
なお、豚肉は、冷やす肉類に分類されますので、どちらかというと、夏におすすめの肉類とされています。
魚類では、鮭、まぐろなどがあたためる魚類ですので、おすすめです。
4.2.2 野菜類
ニラ、にんにく、ショウガのほか、しそ、ねぎ、唐辛子などもあたためる作用が強い野菜類です。
そのほか、たまねぎやかぼちゃもあたためる野菜類としておすすめです。
4.2.3 あたためる果物類
バナナなど暑い地域でとれる果物はからだを冷やすのですが、りんごや桃など寒い地域でとれる果物はからだをあたためる働きをもっています。
4.2.4 あたためる飲み物類
寒い季節には、暖かい飲み物を飲むとほっとしますね。
あたたかい飲み物の中でも、なるべく発酵度の高いもの、たとえば、紅茶、ウーロン茶、プーアール茶を選ぶと、お茶自体にからだをあたためる働きがあります。
このようなあたためる働きがあるお茶に、シナモンパウダー(肉桂)やジンジャーパウダー(ショウガ)などを少し振り入れて飲むのも、からだをあたためるには効果的です。
からだの冷えと肥満の関係についてご紹介しました。冷えから肥満になっている可能性もありますので、からだを冷やさない生活を、こころがけてはいかがでしょうか。