健康のためにバランスのよい食事をめざしたいなら、どのような食事をめざせばよいのか、まず知ることが大切ですね。ここでは、自分の1日に必要なカロリーや栄養素を知り、毎日の食事の目安とするための方法をご紹介しましょう。
目次
1. 1日に必要なカロリーと栄養素の計算方法
毎日の食事は腹八分目がよいとよくいわれます。それでも、美味しいものを目にしたら食べ過ぎてしまうのが人間というもの。自然に食べすぎを避けることができるならいちばんよいのですが、そうでないなら、目安をもっておくに越したことはありません。
カロリーをとりすぎると体重の増加に直結することは、多くの人が実感していることでしょう。
体重1 kgを増やすのに必要なカロリーは7000 kcalです。もし毎日500 kcalの食べ過ぎが続くと、7000÷500=14日間、すなわち2週間で1 kgの体重が増えてしまうわけです。
ポテトチップスやチョコレート菓子の袋に書かれたカロリーをみると、400~500 kcalというものが少なくありません。もし毎日1袋ずつ食べ続けていたら……。ダイエットをしないと簡単に体重は増えてしまいそうですね。
それでは、自分の1日に必要なカロリーはどのように計算すればよいのでしょうか。
1.1 標準体重の求め方
最初に、自分の標準体重を求めます。標準体重は身長がわかれば次の式で計算することができます。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22(BMI値)
たとえば、身長が155cmの人の場合には、1.55×1.55×22=52.9 kgが標準体重となります。
1.2 基礎代謝基準値の求め方
次に、同じ標準体重の人でも、年齢や性別、生活スタイルによって、必要なカロリーは異なりますので、それを考えていきます。
年齢や性別で異なる1日あたりの基礎代謝基準値は、次の表を参考にしてください。
男性(kcal/kg体重/日) | 女性(kcal/kg体重/日) | |
---|---|---|
15~17 (歳) | 27.0 | 25.3 |
18~29 (歳) | 24.0 | 22.1 |
30~49 (歳) | 22.3 | 21.7 |
50~69 (歳) | 21.5 | 20.7 |
70 以上 (歳) | 21.5 | 20.7 |
1.3 身体活動レベルの求め方
また、人によって生活のスタイルが異なりますので、体を多く動かす人と、あまり動かない人では、必要なカロリーは違ってきます。
この違いが「身体活動レベル」ですが、年齢とレベルⅠ~Ⅲで分けて考えます。
- レベルⅠはふだん家であまり動かない場合
- レベルⅡは通勤・通学・家事などをしている場合
- レベルⅢは肉体労働や運動をしている場合
です。
レベルⅠ(低い) | レベルⅡ(ふつう) | レベルⅢ(高い) | |
---|---|---|---|
15~17(歳) | 1.55 | 1.75 | 1.95 |
18~29(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30~49(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50~69(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
70 以上(歳) | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
1.4 1日に必要なカロリーの求め方
このようにして求めた標準体重、基礎代謝基準値、身体活動レベルから、次の計算式で、1日に必要なカロリーを求めることができるのです。
1日に必要なカロリー=標準体重(kg)×基礎代謝基準値×身体活動レベル
たとえば、さきほどの身長155 cmの人が、35歳女性で、家事をしているレベルⅡの場合では、1日に必要なカロリーは、52.9×21.7×1.75=2008 kcalと求めることができました。
2. 食べ物でのカロリーを積み上げる計算方法
1日に必要なカロリーを計算することができましたので、次は、毎日の食事でどのぐらいのカロリーをとっているかを知る方法についてご紹介しましょう。
管理栄養士など栄養に詳しい人に聞くと、食べ物を見るとおおよそのカロリーが頭の中でわかるといいます。たとえば、ご飯を軽く茶碗一膳なら160 kcal、卵を1つ使っているなら80 kcalなど、食べ物の量とカロリーを覚えているため、おおよそのカロリーがわかるのです。
一方、特に栄養に詳しくない人の場合でも、同じように、このご飯で何kcal、野菜が何kcal、炒めるのに使った油は大さじ1杯だから何kcalというように、食べ物のカロリーを積み上げていく計算方法もできないわけではありません。
しかしながら、毎回の食事について考えていくとなると、なかなか長続きはしないのではないでしょうか。
もちろん、すべて料理済みの食べ物を買ってきて食べるのであれば、包装にカロリー表示がされていることも多いので、それを合計すればよいでしょう。
また、外食が多いなら、外食のメニューとカロリーが記載されている本などを活用するのもよいかもしれません。
最近ではダイエットをしている人向けに、カレーライスや天丼、カツ丼、そば、うどんといった外食のカロリーがまとまっている本もあれば、ハンバーガーなどファストフードがまとまった本もあるようです。
でもバランスのよい食事をめざすなら、すべてを外食や買ってきたものに頼るのではなく、自分で料理をしてみたくなるかも……。
そのようなときには、自分で食べ物のカロリーの目安を知る方法が必要になってきますね。
3. 必要なカロリーと栄養素をバランスよくとる方法
3.1 カロリーとなる栄養素のバランス
ところで、健康を保つためには、カロリーだけでなく、カロリーとなる栄養素のバランスも考えることが必要です。
カロリーとなる栄養素は、炭水化物、脂質、たんぱく質の3つですが、炭水化物で1日に必要なカロリーの50~60%、たんぱく質は体重1 kgあたり1.0~1.2 g、残りを脂質でとるようにします。
さきほどの身長155 cmの人が、35歳女性で、家事をしているレベルⅡの場合、およそ2000 kcalが1日に必要なカロリーでした。
栄養素のバランスを考えると、炭水化物は1000~1200 kcal(炭水化物1 g=4 kcalなので250~300 g)、たんぱく質は52.9~63.5 gですので212~254 kcal(たんぱく質1 g=4 kcal)、残りが脂質なので546~788 kcalすなわち60.7~87.6 g(脂質1 g=9 kcal)がおすすめの量といえるでしょう。
このような栄養素のバランスまで考えてくると、計算はかなり複雑になってきました。そこでおすすめしたいのが、糖尿病の食事療法に用いる方法です。
3.2 糖尿病食事療法のための食品交換表を用いる方法
糖尿病の食事療法では、食べ物それぞれの80 kcalに相当する量を1単位とします。また、炭水化物、たんぱく質、脂質といった栄養素をバランスよくとるために、それら栄養素の摂取割合も配慮されています。
本来は食事制限を行う糖尿病の患者さんのために考案されたものですが、日々の食事に容易に取り入れることができるよう、工夫がなされているのです。
具体的には『糖尿病食事療法のための食品交換表』という本が日本糖尿病学会の編集で発行されていますので、これを参考に考えるとよいでしょう。
食べ物を6つの区分(炭水化物を多く含む食品として2区分、たんぱく質を多く含む食品として2区分、脂質を多く含む食品区分、ビタミン・ミネラルを多く含む食品区分)に分けて、その区分の食べ物をどのぐらいとればよいかという目安が紹介されています。
カロリーについては、1日
- 15単位(1200 kcal)
- 18単位(1440 kcal)
- 20単位(1600 kcal)
- 23単位(1840 kcal)
上記の場合で、炭水化物の量を60%、55%、50%と変えた場合の各区分の食べ物の単位数が書かれています。これらの単位数を参考に自分に必要な単位数を考えてみるとよいでしょう。
各区分の食べ物の単位数が決まったら、その区分に含まれている食べ物の単位数分の食材で料理を考えるようにします。
たとえば、ご飯は軽く1膳が2単位ですが、ごはんでなくパンを食べたいときもあるでしょう。その場合は、表に書かれているグラム数や掲載されている写真を参考にして、食パン6枚切1枚に置き換えるようにします。
この方法で注意したいのは、置き換えは各区分の食べ物の中で行うということだけといっても過言ではありません。
必要なカロリーと栄養素をバランスよくとるために、この方法を活用してみてはいかがでしょうか。