健康にすごしたいので食生活に気をつけている
ダイエットのためカロリーに気をつけている
――ここでもうひとつ忘れてほしくないのは「毎日からだを動かすこと」。
食生活と運動に気をつけることが、生活習慣病の予防になると知られています。
よく聞く「適度な運動」というのは、どのくらいからだを動かせばよいのか、ご紹介しましょう。
目次
1.どのくらいからだを動かしていますか?
まず最近の1週間をふりかえってみましょう。
毎日からだを動かしていましたでしょうか。
スポーツが大好きという人は別として、健康によさそうと頭ではわかっていても、毎日からだを動かす習慣というのは身についていない人が多いようです。
厚生労働省では「健康日本21」という文字どおり健康をめざした取組みをすすめています。
最初の期間(平成12年~24年度)の目標は、「日常生活における歩数の増加」(10年間で1日あたり歩数を約1000歩増加)と「運動習慣者の増加」(運動習慣者:1年以上にわたって1回30分以上の運動を週2回以上行っている者の増加)でした。
ところが、平成23年に行われた最終評価では、日常生活における歩数を平成9年と平成21年で比べると、15歳以上の男性では1日8202歩から7243歩へ、女性では1日7282歩から6431歩へと、約1000歩も減少してしまっていたのです。
また、運動習慣者については、平成9年から平成21年で、男性では28.6%から32.2%に、女性では24.6%から27.0%にわずかに増えたのですが、詳しくみると増えたのは60歳以上の人で、女性では60歳未満の人では減ってしまっていました。
男性(15歳以上) | ||
日常生活における歩数 | 運動習慣者 | |
平成9年 | 8202歩/日 | 28.6% |
平成21年 | 7243歩/日 | 32.2% |
-959歩/日 | +3.6% |
女性(15歳以上) | ||
日常生活における歩数 | 運動習慣者 | |
平成9年 | 7282歩/日 | 24.6% |
平成21年 | 6431歩/日 | 27.0% |
-851歩/日 | +2.4% |
このため、平成25年度から「健康日本21(第二次)」として
・日常生活における歩数の増加(1200~1500歩の増加)
・運動習慣者の割合の増加(約10%増加)
などが目標とされ健康への取組みが続けられています。
「健康日本21(第二次)」には厚生労働省の検討会による「健康づくりのための身体活動基準2013」が活用されていますが、「運動」だけでなく、「身体活動」(生活活動+運動)に着目して健康づくりの目安にしているのがそれ以前との違いといってよいでしょう。
2.身体活動(生活活動+運動)で得られる効果
「身体活動」とは、「安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての動作」のことをいいます。
料理や洗濯といった家事、ガーデニングや水やり、子どもと遊ぶなど、運動ではない生活活動も身体活動ととらえます。
「健康づくりのための身体活動基準2013」によれば、身体活動に取り組むことで得られる効果は、将来的な食事や運動不足によって起こる様々な体の不調の予防だけではありません。
気分転換やストレス解消によりメンタルヘルス不調の予防にもなります。
また、腰やひざの痛みが改善したり、咳や熱が出るなどの体調不良をおこしにくくなったり、健康的な体型を保つことで自分を肯定するイメージをもつことができるなど、生活の質を高めることができるのです。
3.身体活動の「強さ」と「量」の指標
ところで、ゆっくり歩いた場合と速歩でウォーキングした場合とでは、カロリー消費量は違いますし、歩いた時間によってもカロリー消費量は違いますね。
どのくらい違うのかを比較できる身体活動の指標として、2つの単位が知られています。
3.1 身体活動 強さの単位「メッツ(METs)」
1つは身体活動の「強さ」の単位である「メッツ」です。
メッツは安静時の何倍に相当するかを示すものですので、座って安静にしているときが「1メッツ」、普通に歩くのが「3メッツ」といった具合に、メッツの数が多いほうが強い身体活動ということになります。
3.2 身体活動 量の単位「メッツ(METs)・時」
もう1つの単位が、身体活動の「量」を示す「メッツ・時」です。
メッツに時間数をかけた値で、3メッツの身体活動を1時間行うと、3メッツ・時ということになります。
3.3 メッツ(METs)表
身体活動(生活活動)と身体活動(運動)のメッツは下記表を参考にしてください。
●身体活動(生活活動)のメッツの例(「健康づくりのための運動基準2006改定のためのシステマティックレビュー」より)
メッツ | 生活活動 |
---|---|
1.8 | 立位(会話、電話、読書)、皿洗い |
2 | ゆっくりした歩行(平地、非常に遅い)、料理、洗濯 |
2.2 | 子どもと遊ぶ(座位、軽度) |
2.3 | ガーデニング、動物の世話 |
2.5 | 植物への水やり、子どもの世話 |
2.8 | ゆっくりした歩行(平地、遅い)、子ども・動物と遊ぶ |
3 | 普通歩行(平地、犬を連れて)、子どもの世話(立位) |
3.5 | 歩行(平地、ほどほどの速さ)、楽に自転車に乗る、階段をおりる |
4 | 自転車に乗る(通勤)、階段をのぼる(ゆっくり)、動物と遊ぶ(中強度) |
4.3 | やや速歩(平地、やや速めに) |
5 | かなり速歩(平地、速く)、動物と遊ぶ(活発に) |
5.8 | 子どもと遊ぶ(活発に) |
8 | 運搬(重い荷物) |
8.8 | 階段をのぼる(速く) |
●身体活動(運動)のメッツの例(「健康づくりのための運動基準2006改定のためのシステマティックレビュー」より)
メッツ | 運動 |
---|---|
2.3 | ストレッチング |
2.5 | ヨガ、ビリヤード |
2.8 | 座って行うラジオ体操 |
3 | ボウリング、バレーボール、社交ダンス、ピラティス、太極拳 |
3.5 | 軽い筋力トレーニング、体操、ゴルフ |
4 | 卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1 |
4.5 | テニス(ダブルス)、水中歩行(中等度)、ラジオ体操第2 |
4.8 | 水泳(ゆっくりとした背泳) |
5 | 野球、サーフィン、バレエ |
5.3 | 水泳(ゆっくりとした平泳ぎ)、スキー、アクアビクス |
5.5 | バドミントン |
6 | ゆっくりとしたジョギング、ウェイトトレーニング、水泳(のんびり泳ぐ) |
7 | ジョギング、サッカー |
7.3 | エアロビクス、テニス(シングルス) |
8 | サイクリング |
4.健康づくりのための「身体活動」の基準
「健康づくりのための身体活動基準2013」では、
・身体活動
・運動
・体力(うち全身持久力)
という目標にしたい3つの基準が定められています。
ここでは健診結果が基準範囲内の場合にすすめられている、身体活動・運動・体力(うち全身持久力)の基準をご紹介します。
血糖・血圧・脂質の健診結果が保健指導レベルであったり、リスクが高かったりする場合は医師に相談するようにしましょう。
4.1 身体活動
18~64歳の場合、3メッツ以上の身体活動(歩行またはそれと同等以上)を毎日60分(週換算で23メッツ・時/週)行うのが目標とされています。
これは、身体活動が22.5メッツ・時/週より多いと、生活習慣病等および生活機能低下のリスクが明らかに低いことがわかっているからです。
65歳以上の場合は、強さ(メッツ)の度合いにかかわらず、毎日40分(週換算で10メッツ・時/週)を目標とします。
ただし、ふだんの身体活動量が少ない人では、いきなりこの量の身体活動を目標とするのはハードルが高いかもしれませんので、今より身体活動を少しでも増やすようにします。たとえば毎日10分多く歩くようにするとよいでしょう。
10~15分の歩行は約1500歩に相当しますので、毎日10分程度多く歩くだけで「健康日本21(第二次)」の「日常生活における歩数の増加(1200~1500歩の増加)」を達成することになります。
4.2 運動
18~64歳の場合、3メッツ以上の運動(息が弾み汗をかく程度)を毎週60分(週換算で4メッツ・時/週)行うことを目標とします。
これは、運動量が2.9メッツ・時/週以上であれば、ほぼ運動習慣がない人に比べて、生活習慣病等および生活機能低下のリスクが12%低いことがわかっているからです。
運動の場合も、運動習慣をもつことが大切ですので、まずは、30分以上の運動を週2日以上行うことを心がけましょう。
4.3 体力(うち全身持久力)
体力については、全身持久力(できるかぎり長時間、一定の強さの身体活動・運動を維持できる能力)が基準とされています。
次の強さ(メッツ)の運動を約3分以上継続できた場合、基準を満たしたことになります。
男性 | 女性 | |
18~39歳 | 11.0メッツ | 9.5メッツ |
40~59歳 | 10.0メッツ | 8.5メッツ |
60~69歳 | 9.0メッツ | 7.5メッツ |
性・年代別の平均以上の全身持久力があると、最も全身持久力が乏しい群よりも生活習慣病等のリスクが約40%低いことがわかっています。
全身持久力を高めるためには、基準とするメッツの50~75%のメッツに相当する運動を行うことが望まれますので、運動をするときの参考になりそうですね。
適度な運動として、どのくらいからだを動かせばよいのか、基準となる身体活動の強さ(メッツ)と量(メッツ・時)をご紹介しました。
毎日の生活のなかの身体活動は少しの工夫で増やすことができそうですね。
まずは、毎日10分多く歩く、30分以上の運動を週2日以上行う、このあたりから毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。