食事として一緒に口に入っても、栄養素により消化されてエネルギーとして使われるまでの流れは異なります。
生きていくためのエネルギー源となる 三大栄養素 は、一般的に、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質、の順番で消化されるといわれています。
それではどのように消化・吸収され、エネルギーとして使われるのでしょうか。
目次
1. 食事に含まれる栄養素
食べ物に含まれている栄養素はいくつかにわけることができます。
栄養素のうち、もっとも基本になるのが 三大栄養素、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質 です。ビタミン、ミネラル を含めた場合には 五大栄養素 とよばれます。
人は毎日いろいろな食べ物をとって生きています。
自宅で食べる料理のときもあれば、あわただしく食べるお昼のお弁当、ときには大好きな料理を食べにお店に行くこともあるでしょう。
料理の種類は違っても、いろいろな食材を組み合わせた食事をとれば、その中に含まれている栄養素の種類に大きな違いはありません。
食品のパッケージには、たんぱく質、脂質、炭水化物などが表示されていますが、この炭水化物が糖質と食物繊維をあわせた量を示しています(参照:炭水化物について知る)。
2. エネルギー源として働く三大栄養素
栄養素はからだの中で、エネルギーになる、からだを構成する、からだの機能を調節するといった働きをもっています。
三大栄養素である糖質、たんぱく質、脂質に共通する働きは、人が生きていくためのエネルギー源となることです。
からだの中に入ると、最終的に、糖質とたんぱく質は1グラムあたり4kcal、脂質は1グラムあたり9kcalのエネルギーにかわります。
食べ物を食べたからといって、すぐにエネルギーに変わるわけではありません。栄養素がからだに吸収されることから始まります。
3. 三大栄養素の消化・吸収の違い
栄養素がからだに吸収されるためには、からだに吸収できるぐらい栄養素が小さくなることが必要です。
食べ物の中には、三大栄養素である糖質、たんぱく質、脂質が混ざっていますので、口の中に入るタイミングは同じです。
でもそこからからだの中に吸収されるために小さくなる「消化の流れ」は栄養素によって異なっているため、消化に必要な時間には違いが出てくるのです。
この流れの中で、糖質、たんぱく質、脂質がどこで消化されるのかを順番にみていきましょう。
3.1 炭水化物(糖質)
食べ物に含まれる糖質には、糖が1つだけの「単糖」や糖が2つ結びついた「二糖類」、糖が3つ以上結びついた「多糖類」があります。
これら糖質がからだの中に吸収されるのは「単糖」となったときだけです。
ですから、単糖である「ぶどう糖」は小腸にたどり着くとすぐに吸収されます。
言い換えれば、単糖でない糖質は単糖になるまで分解されないと、吸収されることはありません。
糖質は小腸内に分泌される膵液中のアミラーゼという消化酵素によって二糖類や三糖類にまで分解されて、さらに小腸の細胞の表面にあるマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼといった消化酵素により単糖にまで分解され、その後はすぐに吸収されます。
炭水化物のカロリーは、1グラムあたり4kcalです。
3.2 たんぱく質
たんぱく質は、アミノ酸が数多くつながったものです。アミノ酸がいくつかつながったものをペプチドとよびます。
食べ物に含まれるたんぱく質は、アミノ酸が数十から数千個つながったもので、消化されてアミノ酸にまで分解されると小腸で吸収されます。
糖質の場合は、単糖にまで分解されないと吸収されませんが、たんぱく質の場合はアミノ酸が2つのジペプチド、アミノ酸が3つのトリペプチドといった小さなペプチドになれば吸収されます。
食べ物に含まれるたんぱく質は、胃で胃液に含まれる胃酸により他の物質と分離され、消化酵素が働きやすい状態になります。
胃ではペプシンという消化酵素により大まかに分解され、小腸に送られます。
小腸ではトリプシンなどの酵素によりペプチドやアミノ酸にまで分解されて、からだに吸収されるようになります。
たんぱく質のカロリーは、1グラムあたり4kcalです。
3.3 脂質
食べ物からとる脂質は、水にとけない性質のため、そのままでは油が集まった状態で消化されません。
消化されるためには小さくなることが必要で、まず小腸に出された胆汁に含まれる胆汁酸と混ざることで油が分散して小さくなります。
さらに小腸に出された膵液の中のリパーゼという消化酵素により、脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。
このように小さな脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されると小腸で吸収されるようになり、吸収された後は再度からだの中で結合して中性脂肪(トリアシルグリセロール)になり、脂肪組織に蓄えられます。
脂質のカロリーは、1グラムあたり9kcalです。
4. エネルギーとして使われる三大栄養素
三大栄養素がエネルギーとして使われる順番は、安静時と運動時では異なります。
安静時のエネルギー源は、約50%が脂肪、40%が糖質、10%程度がたんぱく質ですが、強い運動時に使われるのは、ほとんど糖質からのエネルギーです。
4.1 糖質からのエネルギー
糖質が分解されて吸収された単糖(グルコース)は、解糖系やクエン酸回路(TCAサイクル)という代謝経路により ATP というエネルギーをつくります。
またグルコースは 肝臓 や 筋肉 に グリコーゲンとして蓄えられます。
肝臓のグリコーゲン量は100g程度のため、糖質1グラムあたり4kcalで計算すると、400kcal程度に相当するエネルギーがグリコーゲンとして肝臓にあることになります。
食事の後は、インスリンが働いてグリコーゲンの分解をおさえているのですが、おなかがすいているときには、肝臓のグリコーゲンが分解されてグルコースとして血液中に出てきます。
なお筋肉に蓄えられたグリコーゲン(最大300g程度)からは、血液中にグルコースが出されることはありません。
糖質を多くとりすぎたときは、グリコーゲンとして蓄えることができる限度を超えてしまうため、グルコースの代謝の途中でつくられるアセチルCoAが脂肪酸に変わり脂肪として蓄えられるようになります。
炭水化物をとりすぎると太るといわれるのは、必要以上に糖質をとると脂肪にかわってしまうことからなのでしょう。
4.2 たんぱく質からのエネルギー
からだの中ではたんぱく質は主に 筋肉 にあります。食べ物からとるたんぱく質が直接筋肉になるわけではなく、たんぱく質から分解されたアミノ酸が、十分なエネルギーがある状態で、たんぱく質をつくるのにつかわれます。
逆に、エネルギーが不足している場合には、糖質や脂質がなければ、たんぱく質がエネルギー源(たんぱく質1グラムあたり4kcal)として使われてしまうため、筋肉が減ることにつながります。
4.3 脂質からのエネルギー
からだの中に取り込まれた中性脂肪は 脂肪組織 に蓄えられます。
脂質1グラムあたり9kcalのエネルギーに相当しますので、体重50kgで体脂肪率が20%の人では 脂肪組織10kg(10000g)=90000kcal が蓄えられていることになります。
糖質ではエネルギーがまかなえないようなときには、脂肪組織がエネルギー源として使われます。
エネルギー源となる三大栄養素は、一般的に、糖質、たんぱく質、脂質の順番で消化されるといわれていますが、使われる順番は、糖質、脂質、たんぱく質の順と覚えておくとよいでしょう。
すぐにエネルギーを補給したい場合や運動時のエネルギー補給は糖質の優先度が高いことがわかりますね。