毎日の生活のなかで取り入れたい新鮮な食べ物――これらには、いろいろな種類のビタミンが含まれています。
ちょっと体がだるくなったり肌が荒れたりなど、ビタミンが不足しておこる体の変化は少なくありません。
ビタミンにはどのような役割があるのか、どのようにビタミンをとればよいのかをみていきましょう。
1. ビタミン
ビタミンは五大栄養素の1つで、生きていくためには欠かせません。
体を動かすエネルギーを取り入れるには、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質といった三大栄養素が必要ですが、それに加えて体に必要なのがビタミンとミネラル。
三大栄養素にビタミンとミネラルを含めて五大栄養素とよばれています。
ビタミンは人の体の中でつくられるもののほか、腸内細菌によってもつくられています。
ところが十分な量が体のなかでつくられているわけではなく、また、つくられないビタミンもあるため、食べ物から補給しなければなりません。
2. ビタミンの種類と働き
ビタミンは、水に溶けやすいかどうかで2つに分けられています。
水に溶けやすいビタミンが「水溶性ビタミン」で、溶けにくいのが「脂溶性ビタミン」です。
体に多く取り入れたときに、水溶性ビタミンは水に溶けるので尿に溶けて体の外に出て行きやすいのですが、脂溶性ビタミンは体にたまりやすいという性質があります。
最初にビタミンが発見されたときに、脂溶性のものはビタミンA、水溶性のものはビタミンBと名づけられました。
その後、徐々にさまざまなビタミンが見つかり、ビタミンC、ビタミンD……というように順番に命名されて、現在ではさまざまなビタミンが見つかっています。
2.1 脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンには、最初に発見されたビタミンAのほか、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあります。
それぞれのビタミンの働きについて、表「脂溶性ビタミンの働き」でご紹介しましょう。
種類 | その他のよび方 | 主な働き |
---|---|---|
ビタミンA | レチノール、レチナール、レチノイン酸 | 眼の機能や細胞の成長などに関係する |
ビタミンD | エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3) | カルシウムを調節するため骨の形成と関係する |
ビタミンE | α-トコフェロール | 酸化を防止する |
ビタミンK | フィロキノン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2) | 血液凝固と骨の形成に関係する |
2.1.1 脂溶性ビタミンの不足でおこる病気
いずれの脂溶性ビタミンも食べ物からとることができますが、ビタミンDは太陽の光にあたると体の中でも少しつくられるというのはおさえておきたいポイントです。
日照時間の少ない地域では「くる病」という乳幼児で骨が変形する病気になることがありました。大人では骨のカルシウムが減る「骨粗しょう症」と関係します。
太陽の光を浴びることで骨に関係するビタミンDがつくられますので、太陽の光を浴びる習慣を毎日の生活に取り入れたいものですね。
ビタミンAは不足すると暗いところで目が見えづらくなる「夜盲症」になることが知られています。鳥は暗いところで目が見えないということにたとえて「鳥目(とりめ)」ともよばれます。
ビタミンEには抗酸化作用があり、体が酸化して老化していくのを防ぐ働きをもっています。
この働きを利用して、美白のための化粧品に使われているのを見たことがあるのではないでしょうか。ビタミンEは不足するとしびれ、知覚異常などの神経症状があらわれてきます。
ビタミンKは血液が固まる作用に関係しています。不足すると血液が固まりにくくなるのですが、通常は腸内細菌がつくっていますので、たらなくなる心配はあまりありません。
ところが、細菌をおさえる薬をのんだときなどには、腸内細菌が少なくなり腸内細菌がつくっているビタミンKが減ってしまいます。
また、骨ができるのに関係するオステオカルシンというたんぱく質をつくる際にはビタミンKが必要ですので、ビタミンKがたらないと「骨粗しょう症」にも関係してきます。
2.1.2 脂溶性ビタミンの過剰でおこる病気
脂溶性ビタミンのうち、ビタミンKには取りすぎの心配はありません。他のビタミンA、ビタミンD、ビタミンEはとりすぎると症状があらわれることがあります。
動物性食品からのビタミンAをとりすぎると頭痛や吐き気、妊婦では奇形の原因になりますので注意が必要です。
ビタミンDの場合は、とりすぎると食欲不振や吐き気がおこったり、血管にカルシウムがくっついて硬くなったりします。
ビタミンEは、従来、過剰症の心配は少ないとされていたのですが、サプリメントなどでとりすぎた場合に、骨粗しょう症をひきおこす心配が指摘されるようになりました。
2.2 水溶性ビタミン
水溶性ビタミンには、ビタミンB1・B2・B6・B12のほか、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンCがあります。
それぞれのビタミンの働きについて、表「水溶性ビタミンの働き」でご紹介しましょう。
種類 | その他のよび方 | 主な働き |
---|---|---|
ビタミンB1 | チアミン | 糖の代謝に関係する |
ビタミンB2 | リボフラビン | 脂質の代謝と酸化防止に関係する |
ビタミンB6 | ビリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン | アミノ酸の代謝に関係する |
ビタミンB12 | コバラミン | アミノ酸の代謝やDNAの合成に関係する |
ナイアシン(ビタミンB3) | ニコチン酸、ニコチンアミド | アミノ酸、糖質、脂質の代謝に関係する |
パントテン酸(ビタミンB5) | ― | 糖質、脂質、アミノ酸の代謝に関係する |
ビオチン(ビタミンB7) | ― | 糖の代謝や脂肪酸の合成、ヒスチジンの排泄に関係する |
葉酸(ビタミンB9) | ― | アミノ酸の代謝やDNAの合成に関係する |
ビタミンC | アスコルビン酸 | コラーゲンの合成や酸化防止に関係する |
2.2.1 水溶性ビタミンの不足でおこる病気
ビタミンBでは、ビタミンB1不足で食欲不振、体のだるさ、知覚麻痺や心不全のむくみが、ビタミンB2不足で口唇炎・舌炎・口角炎や視力低下がおこります。
ビタミンB6は腸内細菌がつくるので不足はまれですが不足するとペラグラ様皮膚炎(日光があたって赤くなる、水疱や色素沈着がおこる)や口唇炎・舌炎・口角炎、末梢神経障害、体のだるさなどが、ビタミンB12の不足では物忘れや末梢神経のしびれ・痛み、貧血の一種がおこることが知られています。
葉酸が不足することでもある種の貧血や口内炎、皮膚炎がおこります。ペラグラはナイアシンの不足によりおこり、皮膚炎、下痢、認知症があらわれます。
パントテン酸は腸内細菌がつくるので不足することはまれですが、不足すると足の異常感覚や体のだるさ、うつ状態を感じるようになります。
ビオチンも腸内細菌がつくるので不足することはまれですが、不足すると髪の毛が抜けやすくなることが知られています。
ビタミンCが不足すると壊血病という病気になり、出血しやすくなったり傷が治りにくくなったりします。
2.2.2 水溶性ビタミンの過剰でおこる病気
水溶性ビタミンはとりすぎの心配は少ないのですが、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸については、サプリメントなどのとりすぎでおこる病気が知られていますので、注意しましょう。
ナイアシンはとりすぎると下痢や肝臓の障害がおこることが知られています。
ビタミンB6と葉酸はとりすぎで神経障害などがおこる心配があります。
3. ビタミンをとる目安
それではビタミンは、どのくらいとればよいのでしょうか。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、脂溶性ビタミン4種類と水溶性ビタミン9種類について、年齢ごとの基準が設定されています。
推奨量、目安量、耐容上限量を表「ビタミンの食事摂取基準(18歳以上)」に示しました。
推奨量は実験をもとにしたおすすめの量、目安量は実験で求められない場合の目安となる量、耐容上限量はとりすぎないための目安となる量をあらわしています。
種類(単位) | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|
ビタミンA (μgRAE/日) |
男性:800~900 女性:650~700 |
― | 2700 |
ビタミンD (μg/日) |
― | 5.5 | 100 |
ビタミンE (mg/日) | ― | 男性:6.5、女性:6.0 | 男性:750~900 女性:650~700 |
ビタミンK (μg/日) |
― | 150 | ― |
ビタミンB1 (mg/日) |
男性:1.2~1.4 女性:0.9~1.1 |
― | ― |
ビタミンB2 (mg/日) |
男性:1.3~1.6 女性:1.1~1.2 |
― | ― |
ビタミンB6 (mg/日) |
男性:1.4 女性:1.2 |
― | 男性:50~60 女性:40~45 |
ビタミンB12 (μg/日) |
2.4 | ― | ― |
ナイアシン(mgNE/日) | 男性:13~15 女性:10~12 |
― | (ニコチンアミド量mg) 男性:300~350 女性:250(ニコチン酸量mg) 男性:75~85 女性:60~65 |
パントテン酸(mg/日) | ― | 男性:5、女性:4~5 | ― |
ビオチン (μg/日) |
― | 50 | ― |
葉酸 (μg/日) |
240 | ― | 900~1000 |
ビタミンC (mg/日) |
100 | ― | ― |
ビタミンのとりすぎについて説明してきましたが、推奨量・目安量と耐容上限量を比べると、かなりの差があることがわかります。
ふだんの食事ではとりすぎの心配よりも不足しないよう、ビタミンをとりいれていくようにしましょう。
ビタミン不足の解消にサプリメントを飲むときには、耐容上限量が決められているビタミンは飲みすぎに注意が必要です。
まずパッケージに書いてある量を見て確認するようにしたいですね。
4. ビタミンを含む食品
ビタミンは、次のような食べ物に含まれています。ビタミンを取り入れるには、新鮮な野菜や果物、肉、魚、卵、牛乳など、さまざまな種類の食べ物をバランスよく食べることがおすすめです。
種類 | 食べ物 |
---|---|
ビタミンA | レバー、卵、野菜、果物 |
ビタミンD | 魚、きのこ |
ビタミンE | 植物油、ナッツ |
ビタミンK | 納豆、緑黄色野菜、海藻 |
ビタミンB1 | 玄米、大豆、レバー、豚肉、卵 |
ビタミンB2 | 牛乳・乳製品、レバー、魚、卵、緑黄色野菜 |
ビタミンB6 | 肉、穀物、野菜、ナッツ |
ビタミンB12 | レバー、肉、卵、魚、貝 ※植物にはほとんど含まれない |
ナイアシン | 魚、肉、レバー |
パントテン酸 | 動物性食品 |
ビオチン | レバー、いわし、ピーナッツ |
葉酸 | 葉菜野菜ほか、すべての食物 |
ビタミンC | 柑橘類、キャベツ |
ビタミンについて、体の中での役割や、どのような食べ物に含まれているのかをご紹介しました。
ビタミンは不足してもとりすぎても心配です。新鮮な食べ物をバランスよく食べて取り入れたり、お腹の調子を整えて腸内細菌につくってもらったり、太陽の光をあびて体の中でつくったりなど、毎日の生活での積み重ねを心がけてはいかがでしょうか。